父親に顔が似ているという事実に傷ついた話
世間の人から見て父と私は顔が激似らしい。
小学校低学年の頃、一人でバスに乗っていたら突然知らないおばあさんが
「あなた○○(父の本名)さんちの子でしょ?お父さんそっくりだからすぐ分かったわよー」
と言われ私に千円札を渡してきた。
私は混乱した。
小学生にとって千円札は大金だ。
でも『知らない人から物をもらってはいけない』ときちんと教育されてた私は、おばあさんに「ダメです」と言っておばあさんの持っていたバッグにねじ込んで、降りる予定のバス停で降りた。
迎えにきた母の顔を見て、泣きながらバスの中の出来事を話すと母が笑いながら
「多分●●さん辺りだろうねー。それにしても顔だけで気付かれるなんて、あんた、ほんとパパに似てるのねー」
そう言うと
「パパに似てるなんてやだー!!」
と絶叫して一層激しく泣いたらしい。
私はあまり覚えていないが。
ちなみに帰ってきた父は「娘にそんな風に言われてたんだ……」と言って静かに泣いたらしい。
女の子にとって父親……男性に似ているということはその子にダメージを与え、またその子がダメージを受けたという事実は父親も傷つけるのであった。
負の連鎖は止まらない。
私はおばあさんになっても絶対に自分から女の子に「お父さんに似てるわね」と声をかけたりしないようにしようと思った。
ちなみに今の私は謙遜でも何でもなくお世辞にも美人とは言えないが、何だかんだで嫌いじゃない。
私がよく似ていると言われるのは司馬遼太郎と大木凡人だが、司馬遼太郎先生は小説家として偉大な方だし、大木凡人先生は司会として非常に名高い。
顔だけでなくその才能を引き継げるような人間になりたい。