落語好き腐女子の酒日記(仮)

落語と酒が好きな腐女子の日記です。

スーパー落語 ラブファントム2019感想

10月16日、東京国際フォーラムにて三遊亭とむさんの独演会である『スーパー落語 ラブファントム2019』に行ってまいりました!
この落語会は演芸愛好家の必読書とも言える『東京かわら版』に記事が載っていて、落語史上初!?の宙乗りがあるということで、とてもワクワクしておりました。

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キャパ1500くらいの広いホールなのですが、ほぼ完売ということ。
受付を済ませて中に入ると流行に人一倍疎い私でも知っているような芸能人の方からの花がズラリと並んでおります。

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途中のロビーにある物販コーナーでは円楽一門会の弟弟子さん達も多数お手伝いに駆けつけていました♪

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東京かわら版ツイッターより)

オープニング
とむさんと非常に仲が良い弟弟子である三遊亭らっ好さんが柝を打ちながら登場し、諸注意。そして今から五分間だけは写真撮影OKという神サービス!!!そしてのぼりを持った前座さんが次々と相撲の懸賞金紹介ようにスポンサー(協賛)の名前を読み上げていきます。

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ちなみにこのミニサイズののぼりは協賛である金原亭世之介師匠の事務所であるキングプロダクションが出している鹿鳴のぼりだと思われます。
http://kingpro.co.jp/topic.html
※ミニサイズでリーズナブルに送ることができるのぼりだそう。
諸注意が終わると寄席囃子とは違う、魂を震わせるようなガチの太鼓が叩かれ、なんと上空から三遊亭とむさんが登場です!

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私も色んな落語会に行ってますので、客席から芸人が登場、などは今まで何度も見ていますが、上空からの登場ははじめて!

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無事高座にとむさんが着地すると大歓声!
最前列のど真ん中に座っているセーラー服おじさん

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をいじったり(とむさんのファンなのだそう)しつつ一席目へ。

『んのない女』
両国寄席とかでもたまにかけてた新作落語
「ん」を言うことができない女の子とその女の子に惚れた男の子の落語。
正直両国寄席で聴いた時は他のとむさんの新作落語の方が面白いなと思っていたのですが、今回は後ろのスクリーンに画像が表示されたりと、仕掛けいっぱいの楽しい高座。

ちなみに一席目と二席目の間に着替えのため三分ほど空白の時間があり、とむさんが舞台袖で着替えながら小噺を披露してたんだが、あまり聴き取れなかったし、着替え大変そうだったのでこの時間に何かちょっと小ネタやスクリーンで、面白写真映したりとかすれば良かったんじゃないかなぁ、と思ったりしました。(何様だw)

天狗裁き
男が寝ているところを女房に起こされ「どんな夢見たの?」と言われ「夢を見てない」と言われたことから大騒動になる話。
最初の頃は、お客さんを噺に引きこめていなかった感じ。携帯いじっている人とかもいたし。
でも天狗に吹き飛ばされる場面で本当に空中浮遊に入ってからは凄かった!
後ろのスクリーンに江戸の街並みが映り、のぼりを持った前座さん達が次々と出てくるので、とむさんがのぼりに書かれたスポンサーを次々と紹介w
そして天狗が出てくる場面になると劇中劇ならぬ落語中劇へと場面は変わり、天狗の仮面を被った男性が現れ、お面を外すと何と俳優の尾美としのりさん!まさかすぎる展開が続いて、最後はとむさんが空中で何度もくるくる周り、最後は落語モードに戻ってサゲを言う。
ちょっと色々もっとこうなら良かったのに!って思うところはあったけど、試みとしてはめっちゃ面白かった。

妲己のお百』
最後はまさかの!本格古典落語です!
でもとむさんって実は笑いの少ない噺『芝浜』とか『心眼』がめちゃくちゃ良いんですよ…。
今回『妲己のお百』をやった理由はとむさんが以前女性客に「悪い女が似合う」と言われたからだそうですが、私はとむさんは人の醜い部分が出ている噺がとても好きなのです。
噺自体は笑いどころがゼロ(無理矢理とむさんが入れた一箇所だけ)で、ただただ救いもなくだれも幸せにならない噺。それなのにどんどんこの世界に引き込まれていった。
殺しの場面でズブッって効果音や照明を暗くしたりという演出も。
本当にとむさんって、お百の悪女感が似合うんだよ。
良かったんだ。めっちゃ良かったんだ。
…でも、だからこそ、小さな会場で、余計な照明や音響の演出なしでとむさんの肉声で、聴きたかったというのはある。


とにかく楽しい時間でした!


以下、くそどうでもいい話。

とむさんは、私にとって、「はじめての人」なんですよ。
いや、エロい意味じゃなくてね。
とむさんを知ったのは、まだ彼が「三遊亭こうもり」という名前で前座という修業中の身分の時。

当時大学生だった私はあるきっかけで落語に興味を持って、落語家の知り合いがいるという友人にお願いして連れてってもらったのが両国寄席でした。

テレビとかでなんとなく見たことある寄席のイメージっていうのは、畳があったり、提灯があったり…そういうものだと思っていたんです。


両国寄席を知っている人なら分かると思いますが、入って驚きました。
まさかの前席パイプ椅子!
っていうか壁白い!街の公民館かよ!?っていうか劇場なのに真ん中にどでかい柱があるってどうなのよ!?

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開場と同時に入った我々ですが他にお客さんは誰もいない。
受付でお金を払ったにもかかわらず思わず友人に
「今日客私らだけかもねーw」
と言われて、気まずさから連れてきてもらったにも関わらず来たことを若干後悔していたのですが、何とかお客さんが四人になったところで開演時間となり、幕が開いて出てきたのが当時前座で「三遊亭こうもり」という名前で活動していた今の三遊亭とむさんでした。


当時坊主頭だった彼が座布団に座ると第一声に
「こんなにお客さんがいて、おったまげたー!」
そう言って彼が着物の袂から取り出したのは紐で繋げたお玉と下駄だった。おたまと下駄…だから「おったまげた」

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ということらしい。
どうやらこれは彼のお決まりのギャグらしく、他のお客さんはもう見慣れているのか、呆れているのかほぼ無反応だった。
私と友人だけがフフッとかすかに笑った。
多分、この時に少し緊張がとけた。
そして落語『都々逸親子』に入った。
素直におもしろいと思って私と友人は割と笑っていた。
落語って堅苦しいものじゃなくてお笑いの延長みたいに、気軽に聴けるものなんだ、とちょっと力が抜けたんです。


とむさんは私にとって「初めて自分の意思で行った落語会で最初に落語を聞いた人で、緊張を解してくれた人」なんですよ。


確かにもっと影響を受けた落語家さんは何人もいる。
でも、あの時最初に出てきた前座がとむさんでなかったら、私は多分あの時その後リラックスして落語を聴くことも、ここまで落語にのめり込むこともなかったかもしれないな、と思います。


この日の会(ラブファントム2019)をツイッターで検索すると普段あまり落語を聴きに行かないような人が面白かったという感想が何個も出てきた。
とむさんの落語がきっかけで「落語ってもっと気軽に聴いていいものなんだ、こんな面白いものなんだ」と思った私みたいな人が今までも何人もいただろうし、この日の会を通して思った人もいるだろうし、これからもそういう人がいっぱい出てくるんだろうなぁ。


※ちなみに「おったまげた」のギャグは前座時代に他のお客さんから「伝統芸能をなめるな」と怒られて高座でやるのをやめたらしい。