落語好き腐女子の酒日記(仮)

落語と酒が好きな腐女子の日記です。

落語家の彼女の見分け方

某アイドルが結婚を発表し、ネットは大荒れ、まるで嵐を呼ぶ男のようになっていますね。
そんな中、そのアイドルの結婚相手の女性が交際匂わせのブログを更新していたと話題になっています。
そしてそこからツイッターでは#芸人との交際を匂わせる女 などの大喜利状態となっております。

かれこれ落語家にハマって六年くらいの私ですが、小さな落語会だと落語家の彼女を推測できるという特技?(合ってる保証もないのも多いから単なる趣味?)があります。
別に彼女たちは匂わせるつもりは全くなく、むしろひっそりとしたいのでしょうが、それゆえに落語会に通いまくっている私は気がついてしまったりするのです。

多い特徴として

・一人で来ている場合落語会に来ているのに楽しくなさそうってか、不安そうに辺りを見てソワソワしているorずっと下を向いて開演するまでスマホいじったりしている。
・冬だとマスクしている率高い。(顔を隠したいというよりは、表情を見せたくない?)
・キャパの狭い会(40人くらいとか)だと特に後ろの方や端に座る。
・終わったら、演者がお見送りしている時も特に話しかけたりせずそそくさ帰る。

何でわかるかって?
これ全部私がやってたことだからだよ!
それで普通に好きな(落語家としてね)二ツ目さんの会行ってたら、別のお客さんに彼女だと勘違いされたからだよ!!!!単にコミュ障なだけだっての!!!!あとその時別に彼氏いたわ!!!っていうかその落語家さん結婚して子供いるし、今でも私、普通に彼の会行ってるわ!!!


てなわけでこれだけで決めつけたりしないようにしましょうね!!!
でも実際、若手落語家の会で「この人彼女っぽいな…」って私も思ったことあるし、その人と結婚したって知って「ああ、やっぱり、あの人彼女か〜」って思ったことあるし、あながち間違えではないのかも?

っていうか落語家の彼女さん、彼氏の落語会来て気まずいって思うなら友達連れてこようぜ!!!!
客は増えるし、自分もそんな気まずい思いしなくて済むんじゃないかな!!!知らんけど!!!!
昔、開演時、客席に明らかに落語家の彼女っぽい綺麗な人(全然笑わない)と私しかいない時があって地獄だったことがあるから!!!!
落語会来たなら相手を恋人だと思わず、一人の落語家として見て、落語を楽しめばいいんじゃないの!?


酒の勢いで書いたから後日消すと思う!!!!
じゃあな!!!!

スーパー落語 ラブファントム2019感想

10月16日、東京国際フォーラムにて三遊亭とむさんの独演会である『スーパー落語 ラブファントム2019』に行ってまいりました!
この落語会は演芸愛好家の必読書とも言える『東京かわら版』に記事が載っていて、落語史上初!?の宙乗りがあるということで、とてもワクワクしておりました。

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キャパ1500くらいの広いホールなのですが、ほぼ完売ということ。
受付を済ませて中に入ると流行に人一倍疎い私でも知っているような芸能人の方からの花がズラリと並んでおります。

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途中のロビーにある物販コーナーでは円楽一門会の弟弟子さん達も多数お手伝いに駆けつけていました♪

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東京かわら版ツイッターより)

オープニング
とむさんと非常に仲が良い弟弟子である三遊亭らっ好さんが柝を打ちながら登場し、諸注意。そして今から五分間だけは写真撮影OKという神サービス!!!そしてのぼりを持った前座さんが次々と相撲の懸賞金紹介ようにスポンサー(協賛)の名前を読み上げていきます。

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ちなみにこのミニサイズののぼりは協賛である金原亭世之介師匠の事務所であるキングプロダクションが出している鹿鳴のぼりだと思われます。
http://kingpro.co.jp/topic.html
※ミニサイズでリーズナブルに送ることができるのぼりだそう。
諸注意が終わると寄席囃子とは違う、魂を震わせるようなガチの太鼓が叩かれ、なんと上空から三遊亭とむさんが登場です!

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私も色んな落語会に行ってますので、客席から芸人が登場、などは今まで何度も見ていますが、上空からの登場ははじめて!

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無事高座にとむさんが着地すると大歓声!
最前列のど真ん中に座っているセーラー服おじさん

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をいじったり(とむさんのファンなのだそう)しつつ一席目へ。

『んのない女』
両国寄席とかでもたまにかけてた新作落語
「ん」を言うことができない女の子とその女の子に惚れた男の子の落語。
正直両国寄席で聴いた時は他のとむさんの新作落語の方が面白いなと思っていたのですが、今回は後ろのスクリーンに画像が表示されたりと、仕掛けいっぱいの楽しい高座。

ちなみに一席目と二席目の間に着替えのため三分ほど空白の時間があり、とむさんが舞台袖で着替えながら小噺を披露してたんだが、あまり聴き取れなかったし、着替え大変そうだったのでこの時間に何かちょっと小ネタやスクリーンで、面白写真映したりとかすれば良かったんじゃないかなぁ、と思ったりしました。(何様だw)

天狗裁き
男が寝ているところを女房に起こされ「どんな夢見たの?」と言われ「夢を見てない」と言われたことから大騒動になる話。
最初の頃は、お客さんを噺に引きこめていなかった感じ。携帯いじっている人とかもいたし。
でも天狗に吹き飛ばされる場面で本当に空中浮遊に入ってからは凄かった!
後ろのスクリーンに江戸の街並みが映り、のぼりを持った前座さん達が次々と出てくるので、とむさんがのぼりに書かれたスポンサーを次々と紹介w
そして天狗が出てくる場面になると劇中劇ならぬ落語中劇へと場面は変わり、天狗の仮面を被った男性が現れ、お面を外すと何と俳優の尾美としのりさん!まさかすぎる展開が続いて、最後はとむさんが空中で何度もくるくる周り、最後は落語モードに戻ってサゲを言う。
ちょっと色々もっとこうなら良かったのに!って思うところはあったけど、試みとしてはめっちゃ面白かった。

妲己のお百』
最後はまさかの!本格古典落語です!
でもとむさんって実は笑いの少ない噺『芝浜』とか『心眼』がめちゃくちゃ良いんですよ…。
今回『妲己のお百』をやった理由はとむさんが以前女性客に「悪い女が似合う」と言われたからだそうですが、私はとむさんは人の醜い部分が出ている噺がとても好きなのです。
噺自体は笑いどころがゼロ(無理矢理とむさんが入れた一箇所だけ)で、ただただ救いもなくだれも幸せにならない噺。それなのにどんどんこの世界に引き込まれていった。
殺しの場面でズブッって効果音や照明を暗くしたりという演出も。
本当にとむさんって、お百の悪女感が似合うんだよ。
良かったんだ。めっちゃ良かったんだ。
…でも、だからこそ、小さな会場で、余計な照明や音響の演出なしでとむさんの肉声で、聴きたかったというのはある。


とにかく楽しい時間でした!


以下、くそどうでもいい話。

とむさんは、私にとって、「はじめての人」なんですよ。
いや、エロい意味じゃなくてね。
とむさんを知ったのは、まだ彼が「三遊亭こうもり」という名前で前座という修業中の身分の時。

当時大学生だった私はあるきっかけで落語に興味を持って、落語家の知り合いがいるという友人にお願いして連れてってもらったのが両国寄席でした。

テレビとかでなんとなく見たことある寄席のイメージっていうのは、畳があったり、提灯があったり…そういうものだと思っていたんです。


両国寄席を知っている人なら分かると思いますが、入って驚きました。
まさかの前席パイプ椅子!
っていうか壁白い!街の公民館かよ!?っていうか劇場なのに真ん中にどでかい柱があるってどうなのよ!?

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開場と同時に入った我々ですが他にお客さんは誰もいない。
受付でお金を払ったにもかかわらず思わず友人に
「今日客私らだけかもねーw」
と言われて、気まずさから連れてきてもらったにも関わらず来たことを若干後悔していたのですが、何とかお客さんが四人になったところで開演時間となり、幕が開いて出てきたのが当時前座で「三遊亭こうもり」という名前で活動していた今の三遊亭とむさんでした。


当時坊主頭だった彼が座布団に座ると第一声に
「こんなにお客さんがいて、おったまげたー!」
そう言って彼が着物の袂から取り出したのは紐で繋げたお玉と下駄だった。おたまと下駄…だから「おったまげた」

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ということらしい。
どうやらこれは彼のお決まりのギャグらしく、他のお客さんはもう見慣れているのか、呆れているのかほぼ無反応だった。
私と友人だけがフフッとかすかに笑った。
多分、この時に少し緊張がとけた。
そして落語『都々逸親子』に入った。
素直におもしろいと思って私と友人は割と笑っていた。
落語って堅苦しいものじゃなくてお笑いの延長みたいに、気軽に聴けるものなんだ、とちょっと力が抜けたんです。


とむさんは私にとって「初めて自分の意思で行った落語会で最初に落語を聞いた人で、緊張を解してくれた人」なんですよ。


確かにもっと影響を受けた落語家さんは何人もいる。
でも、あの時最初に出てきた前座がとむさんでなかったら、私は多分あの時その後リラックスして落語を聴くことも、ここまで落語にのめり込むこともなかったかもしれないな、と思います。


この日の会(ラブファントム2019)をツイッターで検索すると普段あまり落語を聴きに行かないような人が面白かったという感想が何個も出てきた。
とむさんの落語がきっかけで「落語ってもっと気軽に聴いていいものなんだ、こんな面白いものなんだ」と思った私みたいな人が今までも何人もいただろうし、この日の会を通して思った人もいるだろうし、これからもそういう人がいっぱい出てくるんだろうなぁ。


※ちなみに「おったまげた」のギャグは前座時代に他のお客さんから「伝統芸能をなめるな」と怒られて高座でやるのをやめたらしい。

ゲストに学べ!はみ出せpan⭐️tee 公演レポ

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『狂っていた。何もかも』

会が終わった直後、動揺した私がツイッターに書き込めたのはこの言葉だけだった。


一晩経ち、落ち着いてきたので会の感想を落ち着いてカクことにする。
ちなみにカクというのは業界用語でセックス という意味らしい。
女とセックスすることをタレをカクと言うらしい。
何で女をタレって言うのかしら。教えてエロい人。

そもそもpan⭐️teeって何ぞやって人はこちらの画像を見て。

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まあ要するに落語家三人によるユニットである。

ちなみにこの日の同時刻に新宿のミュージックテイトでは神田松之丞さんや柳亭小痴楽さんらが所属する芸協二ツ目の大人気ユニット成金(なりきん)の最終公演で盛り上がっていたらしいけど、こっちは玉金(たまきん)の噺をしていたよ!


ちなみにこの日の会の演目はこんな感じ

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なんとこの会に落語芸術協会の大御所、瀧川鯉昇師匠がゲスト出演!
こんなことあって良いのでしょうか!?

そんなこんなで以下レポです。
一人一人文体変えた感じになったけど、本能のままに書いたらこうなっただけだよ。

芋俵 あら馬
昼はPTA会長、夜は落語家という芸術協会期待の新星、三遊亭あら馬さんがこの会の前戯…じゃなくて前座として登場!
二児の母でありながら入門して、PTA会長を勤めながら前座修行をしているのに、下ネタと若い男が大好きというツッコミ所が満載(性的な意味ではないよ!)の前座さんだよ!
明るく元気でそれでいて色んな意味で好奇心旺盛で大胆。まさにこの会の前座としてこれ以上の適任はいないお人だよ!
ちなみに師匠である三遊亭とん馬師匠とのLINEスタンプが発売されている。

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みんな買ってね。使い勝手抜群だよ。

時援交 ブラ坊
ブラ坊さんの新作(改作)落語としてファンの間ではお馴染みの一席。
名作古典落語時そば』のパロディで援交でひっかけた女から代金千円をだまし取ろうという間違いなく百年後も残るであろう名作。

性留守レディ ぽんぽ娘
お色気代表、桂ぽんぽ娘嬢。(嬢ってつけると途端に風俗店のレポ文っぽくなるが、さん付けするのは何だが逆に失礼な気がするので尊敬と敬愛を込めてぽんぽ娘嬢と呼ばせていただく)
マクラで仕事をとっていると豪語するだけあってそのおしゃぶり…いえ、おしゃべりのテクはかなりのもの。
ぽんぽ娘嬢の新作の会には小生も何度か足を運ばせていただいておりますが、今回は初聴きのセックスレスの話。正直、ラストの展開については思うところはあるものの、それが女の性のリアルなのでしょう。タイトルの『性留守レディ』という名前のセンスの良さは流石ぽんぽ娘嬢。これからますますテクを磨いて指名が取りにくくなること間違いなしでしょう。

持参金 鯉昇
困ったように笑いながら出てきた鯉昇師匠。
一体この会でどんなネタをぶつけるのかな、と思ったらいきなりバレ噺(エッチな小噺)を披露!
そして更に実名を出して先輩に自分の女が寝取られた話をはじめ、カイた話なのにとてもここにはカクことができないあんな話こんな話が次々と飛び出します!
そしてそこから『持参金』
もうね…すごいの。鯉昇師匠、古典落語でありながらpan⭐️teeの世界観を崩さず、でも下品になりすぎず、サラッと爆笑をかっさらう。
カッコいい。鯉昇師匠に惚れ直した。


〜お仲入り〜
※お中出しというベタなボケは流石に言わなかった。
ちなみに前座のあら馬さんは自分の高座以降ずっとパンティをかぶって高座返しをしたり、アンケート回収をしていたよ!

お悩み解決コーナー

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このコーナーだけ写真撮影OKだよ。
ユニットの三人に加え、鯉昇師匠、そして前座のあら馬さんも参加。
お悩み解決コーナーということで仲入り中に集めた匿名アンケートを五人がお答えするという。
匿名アンケートなだけに内容は伏せますが、落語界の裏事情が色々漏れ出すスゴイ展開にw
パンティかぶってるあら馬さんが可愛かった。


あげぱん 鯉白
この男、とんでもなく色気がある。
別にイケメンとかじゃない(※主観です)。ただ狂っているのだ。純粋に美しく狂っている。
高校生の客がいるのを確認して、その上で、高座の上で自分のオナニーを再現し始めたのだ。
彼がオナニーをする時に描くストーリーというのは、いきなり怪しい手に体を弄られ気持ちよくなってしまうというものらしい。
それを本気で高座で演じる。
pan⭐️teeに来る客でもドン引きしている人がいたかもしれない。
でも私は狂ったように笑っていた。
(やばい、この男に飲み込まれる)
そう思った。照れなんて一切感じない、高座で本気でオナニーを再現しているのだ。
確かに彼は着物を着ている。ただ、私の目にはまるで裸であるかのようにいやらしく見えた。
いや、違う。着物を着ているからこそ、いやらしい。エロいのだ。
紋付羽織を着ている落語家が目の前で自分のストーリープレイオナニーを再現する。
この時点で一席の落語であった。
自らを何者かに支配され快楽に落(堕)ちていく噺を語る。そう、これがまさに『落語』だ。

後に語った新作落語、確かに面白かった。性に狂った男達が走る、甘酸っぱく、緩やかで、静かに感じる狂気。どんな精神状態であればこんな落語が造れるのであろうか。だが、あの本気のオナニーを見せつけられた後に聴かされる新作落語…あれはセックスでいうピロートーク、まさにマクラみたいなものだった。
あのオナニーの再現こそが彼の落語における本編だった。

マクラの方が本編で本編の方がマクラで。


正直客席にはポカンとしている人もいた。

だが、これぞまさに落語だ。

 

瀧川鯉白は天才落語家だ。


心からそう思った。

新幹線から見えるラブホの数を数えた話

 

新幹線から見えるラブホテルの数が30を超えた頃、母の故郷へ着いた。
もっとも酒を飲んでいたため20を数える時には頰が赤らめるぐらいに酔いが回って記憶が曖昧であるが。
ラブホテルがあったのは都会の繁華街ばかりで、関東を抜けた頃は辺りは真っ暗で一軒もラブホを確認できなかった。
(ラブホって都会に固まって存在しているんだな)
そんなことを思いながら東京駅で買った日本酒をちびちび飲む。
これからの人生で目にしたあのラブホ達を全部制覇できることはおそらくできないだろう。
仮に目にしたラブホに一回ずつ泊まって制覇できたとしても、全部屋制覇となるととんでもない時間と金がかかる。そう考えると人生はなんて短いのだろう。
あの中ではどんなカップル達がセックスをしているのか。もしかしたら知り合いがあの中でまさに今セックスをしているのかもしれない。
そんな妄想が頭をよぎる。


夕方に東京駅から新幹線に乗り三時間半ほど。
花火大会が有名だという駅で降りて、在来線に一時間ほど揺られたところが母の故郷らしい。
降車駅に降り立つと、駅前だというのに辺りは真っ暗だった。
27年間の人生で初めて降り立つ母の故郷は改札すらないまさに『ど田舎』という表現がふさわしい場所だった。


……


母方のおじいちゃんとおばあちゃんが立て続けに亡くなった。
だが、おじいちゃんの記憶は全くないし会わないまま亡くなった。おばあちゃんも亡くなる二週間ほど前に一度会ったが、寝たきりだったということで、話すことすらできなかった。
何故それまでの間おじいちゃんとおばあちゃん会わなかったのか。
どうやらおじいちゃんと母の仲が悪く、高校卒業し家を飛び出してから殆ど実家に帰っていなかったそうだ。
結婚して私が生まれた頃、一度は帰ったらしいが私が一歳か二歳の頃らしく、当然記憶にはない。
それっきり母は私を連れて実家に帰ったことはなかった。
母は自分の両親のことを話さないから、私はてっきり母のおじいちゃんもおばあちゃんも亡くなっているものだと思っていたし、あるきっかけがあって子供心に「ママのおじいちゃんとおばあちゃんの話は触れちゃいけないもの」と思ってこれまでの人生で母の両親について気にしたことは殆ど、いや、全くなかった。
だから二ヶ月ほど前に初めて母方のおじいちゃんとおばあちゃんが生きていたこと、母に妹がいて更に子供が四人いることを知った。
つまり私はおじいちゃん、おばあちゃんの他に急に叔母といとこが四人増えたのだ。橋田壽賀子の家族ドラマのシナリオか。

おじいちゃんの葬式は色々事情があって母と叔母だけで形だけ済ませたらしいが、「おばあちゃんのお葬式の時は来て欲しい」と言われやって今回記憶にある中ではじめて母の故郷に来たのだ。


宿泊施設に着き、荷物を置くなり、母に「おばあちゃんへの手紙を書いてほしいの」と言われた。ちょっとイラっとした。
死ぬ間際まで会わせてもらえなかった私が何で、というか何を書けばいいのか。私がイラッとしたのを察したのか、隣で話を聴いてた初対面の叔母さんがこう言った。
「おばあちゃん、あなたが小さい頃に送った白と黒のワンピースを着た写真がプリントされた手紙、ずっと布団の下に入れてて持ってたんだって」
言われて思い出した。
確かに私は小さい頃、母親に言われてその紙に手紙を書いた記憶がある。でも文は何を書いたかも覚えていない。そもそもおばあちゃん宛ての手紙だったということも忘れてた、というか知らなかった。多分母親に言われたことをそのまま書いていただけだろう。
「おばあちゃん、あんたの手紙きっと喜ぶよ」
そうは言われても寝たきりで喋ることもできないおばあちゃんの姿しか私には記憶がない。叔母さんがのいとこ達は何度もおばあちゃんに会っていたらしいのに私は一度も会ったことないのだ。いとこ達みたいにおばあちゃんの思い出がない。
かと言って『おばあちゃん、会えなくてごめんね。今まで辛かったよね。天国で私達を見守っててね』とかは書きたくなかった。
そうかと言っておばあちゃんに会わせてくれなかった母親を責めることも書きたくなかった。


便箋を机に置いたまま悩んでいると母に
「別に私達に読ませるとかってわけじゃないから好きに書いていいのよ」
と言われた。
好きに書いていい、それなら思いっきり好きなこと書いてやろう。
私は落語が好きだ。
だから亡くなった落語家さんの中から好きな落語家さんを選んでその方について書いた。
あちら側では志ん生師匠や志ん朝師匠を聴けるし、私の好きな夢楽師匠や圓師匠もいる。
それぞれの魅力と好きな演目を紹介した。あれほど悩んでいた二枚の便箋があっという間にビッシリうまった。
こんな手紙もらっても困るだろうに。
でもさ、おばあちゃんが「孫がしつこく勧められて来てみたのよ」
そう言って向こうの寄席や落語会へ行き、客が一人増えればいい。


今、帰りの新幹線でこれを書いている。
灯りがほとんどない今の景色ではラブホテルなんか当然見えない。
これから東京に近付くに連れて灯りが増えて、ラブホテルの灯りも見つけられるはずだ。
それを見て私は帰って来たことを実感する。
そして今度は新幹線から見えたラブホに入る。
今度は私が新幹線に乗った誰かが見つめているラブホの中でセックスをしてやるのだ。

上野のピンク映画館に落語家出演のポルノ映画目的で突入した話。

9月5日、上野の老舗ピンク映画館、オークラ劇場に『蛸と赤貝』という柳家かゑる主演(現・鈴々舎馬風師匠)で落語家さんが多数する映画を観に行きました。
結論から言います。
純粋に映画を楽しみたい人にはオススメできない映画館です。
何故って?
ここでは一般的な映画館とは全く別世界なのです。
本当に男性に変なイタズラをされたいとかって人でない限り、女性、男性に限らず一人で行くのは絶対にやめた方がいいです。


これは、ピンク映画館として有名な上野オークラ劇場に純粋に映画目当てで行った男女カップルのレポです。


この日私達は上野で古本市を覗いたり、オシャレなカフェでお茶をしたりとごく普通のデートをしていました。そして上野公園を散策していると、オークラ劇場の前にたどり着いて目に飛び込んできたのがこちらの看板。

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『蛸と赤貝』主演:柳家かゑる(現・鈴々舎馬風
それは落語界の超大御所が、若き日に主演を務めたポルノ映画でした。
他の出演者を見ると今は亡きケーシー高峰先生、三代目三遊亭圓歌師匠が出演をしている。

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私達は二人して超がつくほどの落語オタクです。寄席や落語会にはよく足を運を運ぶし、落語絡みの本や雑誌も買う。
そして落語家が出演している映画となると、当然観たい。
そしてポスターに記された公開日は偶然にも今日までだった。

 「これ、めっちゃ面白そうじゃない?」
この後の予定が特になかった私達にとって絶好のタイミングだった。
「いや、俺もすごく観たいけど、本当にいいの?ここ、オークラ劇場だよ」


オークラ劇場が男同士で『そういうこと』をやる場所として有名なピンク映画館、と噂には聞いていた。
だが、私はストリップショーも行ったことあるし、ハプニングバーも行ったことある。今更ピンクな映画館ぐらいでビビらない。
というか純粋にこの映画が観たい気持ちが強い。
「でも本当に危ない映画館だよ。俺も一回面白半分で入ったら、突然隣に座ってきたおじさんに手を握られたし」
彼氏君は以前一人でオークラ劇場に入ったことがあるようだ。付き合って一年以上経つのに知らんかった。
なるほど。やはり男性が男性を誘う場であるようだ。
しかし、今日この機会を逃したら次いつこの映画を映画館で観れるだろうか?今日ここでこの映画を知ったのも運命ではないだろうか?
そう思い、私達は映画館へと突入した。
入るとごく普通のロビーがあり、受付の券売機でチケットを買う。一人1600円。映画館として金額は異様に高いわけでも安いわけでもない。
椅子とテーブルがあり、時間つぶししているだろうおじさん達が新聞を広げたり、テレビを見ながらぼーっと時間を潰している。
中には女装をした男性もちらほらいる。どうやら彼ら(彼女ら)はここに来てお目当ての男を物色しているようです。
私たちはお目当ての映画が決まっていたので前の映画が終わるまでロビーに座って、映画『蛸と赤貝』の下調べをしていた。
そういう映画館なので当たり前ですが女性はジロジロ見られる。まあ特に気にしていなかったが、映画館内に入る前にトイレに行こうとしたら、まず女子トイレは勝手に入れないように鍵が掛かっていたため、スタッフの人に言って鍵を開けてもらえた。何で女子トイレに勝手に入れないように鍵がかかっているのか…。まあ、そうせざるを得ない事情があるのでしょうね。
ちなみに後から彼氏君に聞いたのですが、私がトイレ入っている間、女子トイレの前をウロウロしているおじさんがいたそうです。

怖い。

 


前の映画が終わったので、場内に入った。一見するとごく普通のミニシアターだ。
彼氏君に手を引かれ、一番前の端の席に彼氏君が座って、私をその隣に座らせた。
「本当に気をつけて。だれか来ても隣に人を座らせないで」
そう言って私の横にわざと荷物を置きました。
「絶対に手を離さないで。本当に危険だから」
そしてジッと私の目を見てこう言いました。
「この映画館に俺たち以外に映画目当てで来る奴なんてマジでいないからな」
いや、どんな映画館なんだよ…。


ごく普通の場内アナウンスが流れ、辺りが暗くなります。
お楽しみ『蛸と赤貝』の開演です。
映画が始まって十数分。
何人かの男性が劇場内をウロウロして最前列に座っている私達を見ては去っていきます。
上映中のスクリーンの前を堂々と通っていくという普通の映画館だったらマナー違反も甚だしい人もいましたが、ここではやっている映画なんて殆どの人にはどうでも良いのです。
ここに来ている男性は男性に『ご奉仕』したい人、してもらいたい人、またはカップルがイチャイチャするところを見たいという人が殆どなのです。
立ってウロウロしていた人の一人がどこか背後の座席に座った気配がします。
すると間もなくベルトを外すような音が聞こえました。椅子に座ったと思ったら、違う所がタッたのでしょう。
すると今度はビニールのガサガサ音、チュパチュパ音が聴こえてきます。きっと後ろの方でフランクフルトでも食べているのでしょう。
スクリーンでは馬風師匠がおっぱいをパフパフし、女があえぎ声を上げています。そして私達の背後では男性の切ない喘ぎ声が聴こえます。
その間もいろんな男性や女装したお方が私達の前や横を通り過ぎていきます。
しかし、私達が黙ってスクリーンを凝視していると、残念そうな顔をしたり、舌打ちをしたりしながら去っていきます。


映画が始まって30分くらい経つと、1人のおっさんが私達の真後ろに座りました。劇場内はガラ空きなのに真後ろに座ったということに若干の恐怖を感じます。画面ではまた馬風師匠が女性の胸をパフパフしております。
背後から私の背もたれにおっさんが体を押し当てているのを感じます。
後で聞いたのですが、ここは確かに男性同士がイチャつく場でもありますが、
ここに来ている男女カップル=イチャイチャしたい、イチャイチャしているのを人に見せたい奴ら
という風に思われているのです。


椅子越しとはいえ背後からおっさんに体を押し付けられているという事実に次第に恐怖を感じます。
すると彼氏君が私にの方に体を近づけてきます。
(やだ…彼ってば大胆////)
どうやらおっさんが私と彼氏くんの椅子の間に顔を埋めて、私たちがエロいするのを間近で見ようとしていたようです。
それを防ぐために私の方に体を近づけて隙間から近付いてくるおっさんを背中でガードしていたみたいです(こういう優しいとこが好き)。
後に彼はこう語っています。
「あのおっさん、めっちゃ鼻息あらかった」
まさかおっさんは私たちが純粋な映画目的の客だと思っていなかったのでしょう。
私たちがいつエロいことをするのか、それを楽しみでわざわざ真後ろに座ったのです。
それなのに我々は手を握ったまま大真面目に映画を観ている。
おっさんにとっては期待ハズレもいいとこだったでしょう。


無事に映画が終わり、立ち上がる私達。そんな私達を見ておっさんは目でこう言っていました。
「お前ら何しに来たんだよ」


我々はただ純粋に映画館に映画を観に来ただけでした。期待を裏切ってごめんよ、おっさん。
そんなこんなで映画館を後にしました。

 

映画『蛸と赤貝』について。 

需要はあるか分からないが、映画の感想もきちんとカクよ!

ストーリーは超簡潔に言うと馬風師匠演じる若旦那が盗賊の女に惚れたことで起こるドタバタストーリーです。

ストーリーとしてはまあツッコミ所が(性的な意味でも)たくさんありましたが、落語好きとしてはかなり面白かったです。

馬風師匠がおっぱいに埋もれてニヤニヤする場面が面白くて面白くてw

でも喋り方の 、間の取り方は今の馬風師匠そのまんまでちょっと感動しました。

落語の『干物箱』や『湯屋番』『お見立て』などのネタが多数仕込まれているので落語好きはニヤリとできます。

出演者も落語家さんが何人かいて、都家歌六師匠の動いているのを観たのは私はこの日が始めてでした。

他にも三代目三遊亭円歌師匠が「山のあな、あな」を言っていたり、当時立川談十郎だった現・土橋亭里う馬師匠が出ていたりしました。

五街道雲助師匠も出演していたそうですが発見できず。

ちなみにこの日、上野鈴本には柳亭市馬会長が出ていたそうですが、この映画には馬風師匠、先代円歌師匠、という落語協会の会長を務めたお方が二人も出演していたので出演者的にはこちらの方が豪華だよ!(違)

が、出演者の中でも注目したいのはエロ漫談でお馴染みの今は亡きケーシー高峰先生!

ケーシー高峰先生が本当におっぱいを揉みながら連発するエロトーク!これはめちゃめちゃ面白かった!

ラストは安心のハッピーエンド。

マジで今の若い落語家さんとかに観に行って欲しい。

ただあの映画館で映画を観て声出して笑ってるの私らだけで、あとは時々、おっさんの喘ぎ声が合いの手のように入ってきた。


以上、人生初のオークラ劇場レポでした。


あとオークラ劇場には二階がありますが、こちらは女性、カップルは立ち入り禁止です。

つまり二階は…アッー!♂

 

落語好きの腐女子が最近読んだ落語に関する本について〜夏編〜

お待たせしました。(待ってる人いるのか?)
久しぶりの更新になってしまいました…。

最近また落語に関する本をちょこちょこ読んでいるので印象に残っているものをだらだらと紹介させていただきます。
あくまで私が最近読んだだけなので、刊行されたのが大分前じゃないかってのもありますがその辺は大目に見てくれると嬉しいっす。
※尚、感想はあくまで個人的なものです。

 

廓に噺せば 桂歌蔵

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昨年亡くなられた桂歌丸師匠のお弟子さんである桂歌蔵師匠が歌丸師匠をモデルに書いた小説です。
歌蔵師匠は落語は勿論ですが、文筆活動も精力的に行っていて、三月にも落語家が主人公の小説『よたんぼう』が発売されています。
正直に言うと私は『よたんぼう』の方が好きです。歌蔵師匠は自伝的な小説である『前座修業 千の小言もなんのその』も『よたんぼう』も文章の中に怒りを感じるんです。なんて言うのかな。「畜生、なんで上手くいかないんだ」「なんで俺売れねえんだ」みたいな「怒り」が読んでいてダイレクトに伝わってくる。それでいて落語への愛…というより「この世界にしがみついていたい」とか「売れたい」、というような、もがいている感じが伝わってきて、そこがたまらなく好き。
一方、『廓に噺せば』の主人公は元より才能があり、戦争などで苦労するものの、落語家としては比較的順調に進んでいくので、私が好きな「怒り」が伝わってくる文章ではなかったです。
歌丸師匠のファンの人とかにはとてもオススメですが、桂歌蔵師匠の作品のファンとしては『よたんぼう』の方をオススメします。

あ、歌蔵師匠は他にも何冊も本を出しています。
興味ある方はそちらもチェックしてください。
ブログで紹介していない本あったらまた書こうかしら。

 

ベスト・エッセイ2019 日本文藝家協会

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色んなエッセイが収録された作品。
この中にも歌蔵師匠との思い出を書いたエッセイ『師匠,最期の一言「ハゲだっつうの、あいつ」』が収録されています。わずか3ページくらいの短い作品ですが、話のオチがふふってなって、それでいて切なさを感じる作品でした。
ちなみに他にも落語好きの間では馴染みのある杉江松恋さんのエッセイ、作家の千早茜さんによる講談について書かれたエッセイが収録されています。
エッセイっていいですよね。誰かの日常や考えていることを見せてもらえたり、覗かせていただく感覚が私はとても好きなのです。

 

ごくらくちんみ 杉浦日向子

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酒のツマミをテーマにした小説集。どの作品も3ページに満たないものばかりで、電車の中で読むのにちょうどいい。(でも行きの電車で読んでると酒が飲みたくなってきて仕方ないというデメリットもあるw)
え?落語の本じゃないだろって?
いやいや、この中に一つ落語家が出てくる話が一つだけあるんですよ。
どの話は読んでからのお楽しみ。読んで数行で「あ、この登場人物もしかして落語家さん?」と思わせる文章テクニック。
飲むと日本酒と美味しいおつまみをテーブルに置いて、大好きな人と一杯飲みたくなるようなそんな小説集。


Didion02 落語の友達

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落語に関するエッセイやインタビュー集。
広瀬和夫さんのような落語好きの間で有名な人から顔出ししていない一般の(という言い方もアレですが)落語好きの女性までいろんな人のインタビューやらエッセイが収録されております。
みんなの落語への思いが伝わってきてあっという間に読み終えました。
私もいつかこういう雑誌に寄稿したい。


最近仕事が忙しくバタバタしていますが、また落ち着いたらゆっくりブログ始めようと思います。



落語好きの腐女子が最近読んだ落語に関する本について

おまたせ!(誰も待ってない)
久々のブログ更新です!
今回は最近読んだ落語本の感想をだらだら書きます。

 

よたんぼう 桂歌蔵

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発売前から楽しみにしていた歌蔵師匠の小説。
流されて、やけくそになり、それでもあがいて、もがいて、落語にしがみついている主人公。
そんな物語です。
最後の方は無理やりまとめた感を少し感じてしまいましたが、やっぱ歌蔵師匠の文章は読みやすい。
寄席や落語界の描写がリアルなのはもちろんですが、海外とかの描写も妙にリアルなのは海外公演の経験からとかなのでしょうな。
クズだけどクズになりきれない人間が私は好きなのです。私自身もそうだからでしょうか(お前クズ中のクズだろというツッコミは受け付けない)
7月に発売する『ベスト・エッセイ2019』

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にも歌蔵師匠のエッセイが収録されているとのことで今から発売が楽しみです。


師いわく  春風亭一之輔 キッチンミノル

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人気落語家春風亭一之輔師匠が写真家のキッチンミノルさんと共に読者の人生相談にゆるゆる答える本。
なんていうのか、大真面目に読むものじゃなくて、居酒屋でたまたま隣に座ったおじさん二人(と言うと怒られるか)の話をぼーっと聞いてるって感じ。
家で缶チューハイ開けて枝豆食べながら読むのがちょうどいい本です。

 

寄席わらしの晩ごはん 名取佐和子

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不可解な現象が起こることから、お客が入らない寄席に、無職の青年が訪れる。彼は寄席に住む『座敷わらし』ならぬ寄席わらしが見えることから寄席わらしのご飯係『特座』なり…。
ライトノベル的な感じでサクサク読める。
お医者さんはよく医療ドラマを見てツッコミまくるって言うけど、落語オタクも落語漫画とか見るとついついツッコミを入れちゃうんだよね。
まあ、ファンタジーの中の落語界の話だと思って気軽に読もうぜって感じ。
寄席わらしのフクちゃんが可愛い。


番外編
Oggi7月号

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ファッション誌ですが、落語特集が組まれているとのことで購入しました。
落語入門的内容が簡潔にまとめてありました。イケメン(名前忘れた)が寄席にいる写真を載せているのは女性ファッション誌ならではですね。
落語に関する質問にサンキュータツオさんが答えており、落語家は○○○との結婚率が高いとかも書いてます(笑)
え?ファッションのページ?
ごめん、読んでないっす…。少しは見た目に気を使います。はい。すみません。