空き巣に入られた話。
先日、落語会でで泥棒の出てくる落語を聴いた時に突然思い出した。
うちも空き巣に入られたことがあったな、と。
中学生の頃のことだ。
当時私の両親は共働きで家に帰ると自分で鍵を開けていた。
まあ早い話が鍵っ子というヤツである。
その日入ると家全体に違和感があった。
我が家は引き戸なのだがその扉が鍵を開ける前から空いている。
閉め忘れかと思って気にしなかったのだが、部屋に入ると全体的に何とも言えない気持ち悪さがあった。
玄関に私の財布が置いてあり、百円玉一枚だけを残してお金が全てなくなっていた。
しかし、まさか空き巣とは思わなかったので母がお金が足りなくて困って慌てて持っていったくらいにしか思わず、
「いくら自分の娘とは言え金借りるくらいなら一声かけろよ」
と思い、部屋に入った。
しかし、やはりおかしい。
いや、ハッキリ言って我が家は普段から散らかっていた。
だが、それにしても何とも言えない気持ち悪さがあった。
あちこちの引き出しが開けっ放しである。
しかしどこまでも能天気な私は
「母が朝、何かの書類を急いで探していた。それで引き出しが開けっ放しだった。その上、金が必要で娘の財布から金を借りた」
と結論づけてテレビを見始めた。
ほんの一瞬だけ「泥棒が入ったんじゃないか」という想像が頭をよぎったものの、部屋の目立つ位置に置いてあった私のお気に入りのおやつ『全粉末ビスケット』が無事だったので(いや、それはないな)と思った。
そこへ偶然来た祖父母(後で聞いたところ『胸騒ぎがしてきてみた』とのこと)が和室の方の窓ガラスが割られているのに気がついた。祖父母と一緒に恐る恐る二階へ行くと二階のクローゼットがめちゃくちゃに荒らされていた。
両親と警察に連絡をした。
母が仕事を早退し家に帰ってくるのと同じくらいの時間に警察が来て取り調べ的なのがはじまった。
テレビドラマでしか見たことないような指紋をとるフワフワの棒を使って引き出しの取手を調べたりする。
警察「あの、書類の棚、ぐちゃぐちゃにされてますね。もしかしたら何か盗まれてたり……」
母「あ、いえ、あそこは元から散らかっていて……」
警察「あ、そうですか……」
という我が家が普段から散らかっていることが警察にバレるという二次災害が起きたりしたが、無事に諸々の調査が終わり、警察が帰っていった。
そして風呂に入ろうとした所で事件が起きた。
風呂場にある下着ケースから私のパンツが全て消えていた。
母に「パンツがないんだけど」と言うと「干してあるところから持って行きない」と言われた。
しかし、部屋に干してあった洗濯物の所にも私のパンツだけ一枚もない。
現金のことや割られたガラスの方に目が行き過ぎて風呂場の方や洗濯物のことを誰も気にしていなかったのである。
どうやら下着も全部盗まれたようだった。
流石に夜中だったので警察への連絡は明日にすることになった。
再び家に警察が来て事情聴取をされた。
「娘さんのパンティーが○枚ほど」
と言われ警察の書類にパンティーという文字が書かれる。
「パンティーの入っていた引き出しですが……」
パンティーと連呼する大人たち。
なんかシュールな光景だな、と子供ながらに思っていたら母が急に口を開いた。
「おかしくないですか?私のパンツは部屋に干しっぱなしだったのに一枚もとられてないんですけど。何で娘のだけ盗まれたんですか?」
警察が戸惑っていると父が言った。
「泥棒だってお前のより若い子のパンツの方が良いに決まってるだろ……」
それから先のことはよく覚えていない。
あの空き巣は捕まったのだろうか。
私の全財産と下着の行方は未だに分からない。
もしかしたら私の下着はネットか怪しい店に売られたのかもしれない。
もしそうなら、いくらで売れたのだろうか。
その取り分はもらう権利があるはずだ。
まあ、ガチで犯人と鉢合わせしなくて良かったなと思う。
ガラスを割って入るくらいだから凶器は持ってただろうし、下手したら殺されてたかもしれないからね。