落語好き腐女子の酒日記(仮)

落語と酒が好きな腐女子の日記です。

ほぼニート時代の思い出

私は就活というものを全くしないで大学を卒業した。
だからエントリーシートの実物すら見たことない。
理由は単純で大学に入った途端、落語にハマっていて、毎日のようにバイトか落語会に行っていたからだ。ちなみに就活サイトの登録説明会も就職活動の解禁日も予約していた落語会があったから行かなかった。クズである。

もちろん学生全員強制参加のキャリアセンターでの進路個別相談などもあったりしたが、その頃はテレビの映像系のバイトをしたりしていたので「卒業後も今のバイトを続け、将来的には映像系の業界に行きたいです」などと言ってごまかしていた。事実、当時はそのつもりでいた。
しかし大学卒業と同時に映像系への興味がさめた。
カッコイイ言い訳をすると、テレビよりその場でお客さんの反応が直に返ってくる落語や演劇のような舞台の方が楽しかったからだ。

大学卒業してからすぐ映像系のバイトを辞めて舞台系の仕事を探そうと決意した。
しかし、いざとなると臆病者なので舞台関係の仕事に飛び込む勇気が出なかった。

それからしばらくライター業をしている先輩の仕事を手伝って小遣い稼ぎをしながら、貯金を食いつぶして『自分のやりたいことを見つける』と言い訳して平日の昼間に動物園に行ったり寄席に入り浸っていたりした。

親には「就活しているけど上手くいかない」という風に言って誤魔化してはいた。
一ヶ月以上経つと流石に「この状況は世間的に見てヤバい」と思い、若者向けのハローワークに行った。
何箇所か求人案内の紙を印刷して、一息つこうと思って近くの椅子に座った。
目の前に本棚があり、いろんな職業の本が置いてあり、その中に『落語家になるには』というのがあった。

その本に感銘を受けた私は弟子入り志願を決意し……

とはならなかった。
普通に(うわっ!私の好きな柳家小三治師匠のインタビュー載ってるじゃん)とか思いながらイスに座って丸々一冊読んでいた。
読み終えて本を戻して、ハローワークから外に出てから気付いた。

肝心の印刷した求人案内の紙をどっかに置き忘れた。

まあ、面白い本が読めたので良いかと思いその足で寄席に行った。
今考えると救いようのないクズである。

色々あって貯金が本格的になくなり「金稼がないと本当にヤバい」と思って短期バイトを探した。
その中の会社の一つが条件が良かったので応募した。しかし短期とはいえ登録制の会社だったので面接と履歴書の持参が必要だった。
履歴書の趣味欄に落語と書いた。
面接に行くと、会社の社長が落語が好きだということで、なぜか一緒に飲みに行くことになった。

社長と飲みに行くと友人という某落語家さんを紹介していただいた。
話の流れでその場で連絡先を交換した。
私が冗談で「今ニートなんで仕事あったら紹介してください」
と言うと数日後、その落語家さんから連絡が来た。
「今○○劇場でスタッフ募集してるよ」
と言われた。

劇場に電話をして面接に行った。
履歴書を出してから気付いた。
写真を貼るのは愚か、撮ることさえ忘れていた。
更には応募している曜日と私の希望日が合わない。
(こりゃ不採用だな)
と思ったが
「まあ、彼の紹介なら間違いないな」
言われて何とかバイトではあるが仕事が決まった。
人生何があるかわからないんだな、と思った。
あと、その落語家さんには足を向けて寝れない。
何か恩返しをしたいな、とずっと思っていた。

そして数年経ってようやく思いついた。
私は落語の面白さを伝えられるような文章を書けるようになろう、と。