落語好き腐女子の酒日記(仮)

落語と酒が好きな腐女子の日記です。

妄想手土産考察

私の密かな趣味はデパ地下で架空の友人への手土産を買うことだ。
もっと分かりやすく言うとデパ地下へ行き架空の相手を作り出しし、その人へ向けての手土産を吟味して買うのだ。
「何を言ってるんだコイツ」と思うだろう。
私も何人かにこの趣味を打ち明けたが「何言ってるの?」とか「良い病院紹介しようか?」とか「そんなことより踊ろうぜ」などと言われ相手にされなかった。ちなみに病院と踊りの誘いは断った。

 

具体的にどんなことをしているかというと、例えば先日は『ミサキ先輩という最近結婚した私より三歳上の職場の先輩のお宅にお呼ばれした』という設定で新宿伊勢丹の地下を歩いてみた。
なお、現実にはミサキ先輩なんて人は存在しないし、当然その旦那さんも実在しない。
しかしそう設定を決めてデパ地下を歩き始めると段々と細かい設定も浮かんでくる。
ミサキ先輩は美術館巡りと甘い物が好き。旦那さんは大学の同級生で五年の交際を経て結婚。仕事もできて、この前私がお客様対応で困っていたらフォローをしてくれた。家では熱帯魚を飼っているetc……
想像を膨らませているうちにミサキ先輩の人物像がよりリアリテイを増してくる。想像で作り上げた架空の人物であることを一応モットーとしているが、想像力が足りなくて実在する私の知人に似てしまうこともある。それはそれで良い。あくまで趣味なのだから。
予算を決めて(大体高くても2000円くらい。それ以上は収入的にキツイ)一つ一つのお店を回ってみる。

エビをそのまま煎餅にしたお菓子見つけた。
可愛い和風な制服を着た店員さんが試食を勧めてくる。
私が海老好きなのもあるが美味しい。また桜エビなどでなく海老天とかに使われる大きさの海老がそのままの形でお煎餅になっているというのも珍しい。買ってみようかなとも思ったが、新婚さんへの手土産としては渋いし、もし旦那さんが海老アレルギーとかだったら申し訳ないな、と思い見送った。
ただ年配者の人への手土産という設定時には有力候補になりそうだ。

次に目に止まったのは海外のチョコレート。
スマートフォンくらいの大きさの箱にチョコレートが8粒程。
これで2500円ほどする。ミサキ先輩は甘いもの好きだし、量より質タイプだから喜んではくれるだろうが、家にお呼ばれした時の手土産としては小さすぎる。

いっそ思い切ってフルーツゼリーとかにしてみるか?
老舗フルーツ店をのぞく。旬のフルーツを使ったゼリー。喜んでもらえそうだが予算オーバーだ。

そんな風に考えながら店を回っていると店員さんが「お手土産をお探しですか」なんて声をかけたりしてくれる。
店員さんはまさか私が架空の人への手土産を探しているとは思わないから、真剣に手土産選びに協力してくれる。
いつの間にか私もミサキ先輩が妄想の中の人物であるということを忘れ彼女への手土産を真剣に選ぶ。

この日は一つ一つは小さいが桜や葉っぱをかたどった見た目も綺麗なゼリーを選んだ。
店員さんが「お渡しの際に使う紙袋もう一枚入れておきますか?」と言われると「はい」と答えて、丁寧に包装されたお菓子の入った紙袋を受け取った。
喜ぶ先輩の顔が思い浮かんだところで気がついた。


私にはこの後ミサキ先輩の家に行く予定なんてないし、そもそも私にはミサキ先輩なんていない。

しかし、お金を払いお菓子は買った。
結局こうして買ったお菓子は毎回自分で食べることになる。
体重は増えるしお金はかかるし、人にはドン引きされるこの趣味だが実は良いことが一つある。


自然とデパ地下の手土産用のお菓子に詳しくなるので本当に誰かへの手土産を探す時に参考になるのだ。
……もっとも現実で手土産を持っていく機会なんて年に数回しかないのだが。


さて、今度はどんな人への手土産を買いに行こうかと考えている。