落語好き腐女子の酒日記(仮)

落語と酒が好きな腐女子の日記です。

ただ立っているだけのバイトをした話

知り合いのイベントプランナーさんから四日間の短期バイトをしないかと誘われた。

まあ詳しくは言えないが大企業のセミナーの誘導係である。
ギャラは良かったが、メールに送られてきたマニュアルも数ページはあった。
そこそこ大変な仕事なのかと思いドキドキしつつ、現場に行くとリーダーの人に言われた。

「マニュアルに色々書いてあったけど、気にしなくていいよ。俺たちはこの矢印の案内板持って立っているだけで良いから」

めっちゃ楽じゃん!
誘導係とは名ばかりで、ただ矢印の紙を持って立っているだけ。ぼーっとしてればすぐ終わるなーと思った。

開始、三十分経ってから気がついた。
何もしないで立っているって辛い。
ていうか、時間は全然進まないし、めっちゃ暇である。

立っている場所はビルの入口だから日陰なので暑くはないが、目の前はオフィス街の歩道なので座り込んでサボることもできない(いや、そもそもサボろうとするなよ)。

そこで何とかして時間を潰そうとして次のようなことにチャレンジした。

○通りすがりの人を使って妄想
例えばスーツ姿の二十代女性(仮名:真奈美)とその上司と思われる四十代男性(仮名:山本)が通り過ぎたとする。
そうすると頭の中で二人の関係を妄想する。
真奈美には大学時代から付き合っている同い年の彼氏がいる。特に不満があるわけではないが、正直このまま結婚してしまうのは何だか物足りない気持ちでいる。
一方、山本の方は最近妻の浮気に気付いてしまった。しかし子供がいる手前そのことには触れずに日常を過ごしている。
そんな二人が職場で出会った。真奈美の愛らしさに山本は年甲斐もなくトキメキを覚えてしまい、真奈美もまた山本の落ち着いた大人の魅力に胸の高まりを覚える。
そして二人は、仕事の飲み会帰りに酔った勢いで男女の関係になってしまう。
大人として割り切ろう、と思うもののお互い日常の足りないものを埋め合わせるかのように不倫の関係になってしまった……。
もちろんそれを周囲には言えず、共に営業の外回りに行った時だけ堂々と二人並んで歩けるという束の間の昼デート気分を味わっている。

みたいな風にだ。

最初のうちは楽しかったが、何度やっても不倫パターンしか出てこないということに気付いて後半は飽きてしまった。

○なぞかけ作り
目についたモノや人で謎かけ(○○とかけまして●●ととく。その心は□□です)をつくるアレだ。

そのでお題集めのため目の前を通り過ぎる人たちからお題をもらおうとする。
「スーツとかけまして」
「新入社員とかけまして」
「メガネとかけまして」

オフィス街だからかほぼスーツ姿の人しか通らないからお題が限定される。
十分くらいで飽きて辞めた。
それに良いなぞかけはできなかった。
謎かけでお馴染みの、ねづっちさんと紺野ぶるまさんはやっぱスゴい。

 

○一人しりとり
とうとう暇つぶしの定番一人しりとりを始めた。
最初のうちは楽しい、しかし次第に
(また『イ』かよ!)
(『プ』で始まる言葉そんなねーよ!)
と自分で自分にツッコミを入れ始める。

自分の知識との戦いである。語彙力欲しい。
でもこれは二時間続けた。


○無の境地になる
ただただぼーっとして時間が過ぎるのを待つという。
簡単そうで一番難しかった。っていうかなれなかった。
そもそも私は幼い頃からじっとしているのが苦手だったな、と突然幼少期に思いを馳せてみたりした。

 

ただ立っているだけということがこれ程辛い、ということを知った。
いつもより時間が過ぎるのがめちゃくちゃ遅かった。

ギャラは良かったが、また同じバイトしないかと言われたらちょっと考えてしまう。

 


好きなことだけで飯が食えるようになりてえ。